» MMPI の歴史

MMPIの開発は、1930年代から当時の精神医学的診断に寄与する客観的な査定道具の作成を目的にハサウェイとマッキンリーによって開始され、1943年にthe Minnesota Multiphasic Personality Inventoryとして公刊されました。これが原版のMMPIです。ご存じのように尺度名は当時の診断名を反映しています。開発当初は、第5尺度と第0尺度はなかったのですが、後に付け加えられ、?、L、F、Kの妥当性尺度、1から0までの10個の臨床尺度からなる基礎尺度が完成しました。

MMPIの開発で重要なのは経験的アプローチという方法が採用されていることです。経験的アプローチとは、ある特定の診断名の集団のある項目の是認率が標準化集団と比べて差が大きい場合(±2標準誤差)に、その項目をその診断名を測る尺度に採点するという手続きです。内容を吟味して決めたのでもなければ、因子分析をして同様の傾向を持つ項目をまとめて尺度として決めたのでもありません。

その後、研究が進むにつれ、ある特定の診断名の患者が該当する尺度得点だけが上昇するわけではないこと等により、診断名を示唆する尺度名ではなく、臨床尺度は数字で表記されるようになりました。また、診断、症状、行動特徴、認知特徴、家族歴等の情報はコードタイプによって共通点があることもわかってきており、現在ではコードタイプから解釈仮説を引き出すことが一般的です。

米国での使用頻度では必ず上位に入っていますし、研究文献の数もPsycINFOを用いてタイトルにMMPIが入っているものという条件で調べたところ(2004年6月現在)、累積3806件であり、ロールシャッハ法(3641件)を抜いていますが、わが国ではロールシャッハ法と比較すると使用頻度も研究文献数も低迷しています。

米国では1980年代の終わり頃から、項目文章の文言の問題、原版の標準化手続きの不備等の問題から、MMPIの再標準化が始まり、それを契機に、原版との連続性を維持するという流れの中で最終的にMMPI-2が完成しました。

わが国では、1963年にMMPI日本版が公刊されましたが、誤訳や標準化手続きの問題が当初から指摘されており、これらの問題を解消するための作業が1990年頃から開始されました。この作業は、是認率や社会的望ましさといった数値データを参考にしながら項目文章の翻案(adaptation)を行ったこと、国勢調査結果と比例按分した(census-matched)標本を用いた標準化作業が大きな特徴であり、日本の質問紙法検査の翻案・標準化作業としては類を見ない正当な手続きを採用しています。1993年にMMPI新日本版が公刊され、皆さんが現在使用しているMMPIはこの新日本版ということになります。

MMPIの解釈は難しいですが、使いこなせるようになるとロールシャッハ法と同等の情報が得られますし、私見ですが、検査結果のフィードバックはロールシャッハ法より対象者にとって理解しやすいように思われます。対象者の精神医学的側面を含め、多面的な情報が得られることもMMPIの強みでしょう。現在、MMPIを使用している皆さんが事例検討も含めて実証的なデータを集積し、公表していくことで、わが国の心理臨床家のMMPIの共通の知識が増大し、最終的には対象者の利益になる心理査定の確立につながっていくと考えています。

運営委員 塩谷 亨(金沢工業大学心理科学研究科 教授)


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