» MMPI追加尺度の臨床的応用 第2版

追加尺度の臨床的応用MMPIは4個の妥当性尺度と10個の臨床尺度からなっており,初学者はこれらいわゆる基礎尺度についてまず勉強する。しかし,MMPIには基礎尺度の他にも数多くの追加尺度が発表されており,基礎尺度でわかる以上の詳細な情報を得るために使用することができる。

本書には役に立つMMPI追加尺度を有効に利用するために必要な情報が掲載されている。追加尺度についてきちんと解説されている日本語の本はこれまでに無いため,追加尺度の使用を考える人には読んでおいて欲しい本である。しかしクックブック的な手引きではなく,既存の尺度についての問題点の指摘も多いため,全くの初学者ではなく基礎尺度についての知識や解釈の経験を踏まえてから読むことがお奨めである。

この本の目的は,MMPI追加尺度の臨床への採用を促進すること,とある。追加尺度は多数出ているが,尺度の真の意味や有用性についての情報,交差妥当性の資料など,基礎資料がほとんどないものが大部分であり,使用を妨げている。そこで,既存の追加尺度の研究結果と,著者たちが関わったインディアナ・サンプルでの研究結果とを基に,様々な追加尺度を臨床的な有用性という観点から分析している。

この本は8章からなっている。大まかな内容は以下のようなものである。

第1章 序  

MMPIの方法論的な欠陥や批判から始まり,それを補うはずの追加尺度の軽視を踏まえて,インディアナ・サンプルによる追加尺度の検証の必要性へと論を進めている。

第2章 妥当性尺度  

従来の妥当性尺度の概観と問題点,新しい妥当性尺度の分析が述べられている。

第3章 有用な追加尺度  

いくつかの追加尺度やその下位尺度について,それぞれの特徴や問題点をあげ,臨床的な有用性について評価している。取り上げられているのは,ハリス・リングース下位尺度,ウィギンス内容尺度,トライアン・スタイン・チュークラスタ尺度,インディアナ論理尺度その他であり,本書の中核となる章の1つである。

第4章 精神病理の査定  

精神病理の査定に関して,いくつかの症状(不安,抑うつ,精神病性,反社会的傾向,物質乱用と性的問題など)の測定に使用できる追加尺度,葛藤に関する追加尺度,予後に関する追加尺度などについて論じられている。

第5章 適応とパーソナリティの査定  

MMPI項目プールの特徴から,心理的適応の測定は困難であることを述べ,その上で社会的適応や,いくつかのパーソナリティパターンの測定に資する追加尺度について論じている。

また,この本の大きな試みとして,各型のパーソナリティ障害の診断に適用できる追加尺度と,それらを補完する個々の項目を選択する方法論が述べられている。

第6章 MMPI追加尺度とロールシャッハ

ロールシャッハの諸変数とMMPI追加尺度との相関について報告した未公表の研究をあげ,査定の有効性と正確さの向上のためにロールシャッハとMMPIの追加尺度が補完的に働くことを,3つの事例の解釈を通して示している。

第7章 MMPI-2でのオリジナルMMPI追加尺度の役割

第8章 MMPI-2の内容尺度  

これらの章では,いくつかの主要な追加尺度にMMPI-2が及ぼす影響を検討しつつ,それらの追加尺度がMMPI-2においても引き続き有用であることを述べている。

付録Ⅰ~Ⅵ

付録でもっとも興味深いのは,付録のⅤ.人間コンピュータプログラムであろう。MMPI追加尺度と個々の項目に基づいた診断的叙述のライブラリーであり,コンピュータを使用する予定の無い人にとってもレポートを書くときの参考に出来る。

付録Ⅰは追加尺度の項目と出典が示されている。付録Ⅲ-2は本書で取り上げられている追加尺度のうち主要なものについて,新日本版MMPI標準化サンプルのデータにおける平均値及び標準偏差が示されている。これらの追加尺度を新日本版で活用しようとする人にとっては役立つ情報であろう。

-MMPI研究・臨床情報交換誌Vol.22  書籍紹介より-


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