» 「MMPIによる心理査定」の紹介

MMPIによる心理査定

MMPIによる心理査定

本書は「MMPIの包括的な概説書」と序文に記されているが、それは目次を見れば一目瞭然であり、MMPIの作成と発展経過から実施、解釈、報告書作成に至るまで、MMPIの基本的知識は本書で得ることができる(各章の詳細はリンク先を参照)。

第1章 MMPIの発展
第2章 実施、採点、および整理法
第3章 MMPI成立後の主要な展開
第4章 解釈のアプローチ
第5章 基礎的な妥当性尺度の解釈
第6章 MMPI臨床尺度の解釈
第7章 解釈と報告書の作成
第8章 MMPIのコンピュータ解釈
第9章 MMPI再標準化計画

各尺度および多くのコードタイプの解釈仮説が豊富に掲載されていることから、第5章と第6章がもっともよく利用される部分ではあろうが、それ以外にも他にはない詳しい解説が盛り込まれている。たとえば第2章では、比較的容易に実施できる質問紙法で見落とされがちな実施時の留意点について解説してある。また第3章で紹介されている追加された指標や特殊指標についての記述は、MMPIを活用してきた臨床家がそれぞれの経験の中で新しい知見を見出し発展させてきた歴史でもある。他にも巻末の付録A~Hを含めて本書全体にMMPIの理解を深め、その使用方法や解釈に示唆を与える情報が本書にはちりばめられている。それゆえ、本書はMMPIの初学者にも経験を積んだ者にも、ちょっとマニアックな人にも役に立つ概説書であり、幅広い人々に有用であることも「包括的」といえる特徴であろう。実際にMMPIを使用している人の多くが本書を手にして活用しており、その目的は臨床や研究において果たされていると思われる。

本書の注目すべき特徴として、クライエントにMMPI結果をフィードバックすることにはっきりと焦点をあて、詳しくその方法について解説している点が挙げられる。解釈についての記述が現在においても有用であり続けているように、ここで述べられている結果のフィードバックに関する説明は、非常に具体的でわかりやすいものである。しかし目次を見ただけではこのフィードバックに関する内容が含まれていることがわからない、という欠点がある。ここに記すことで少しでも多くの人に読んでいただければ幸いである。

運営委員 大矢 寿美子(金沢工業大学心理科学研究科 教授)


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